電動アシスト自転車のバッテリーの寿命を長くする方法
電動アシスト自転車の重要なパーツでありながら、劣化があるのがバッテリー。バッテリーの基礎知識や、寿命を長くする方法を解説します。
公開日: 2024.10.23
電動アシスト自転車のバッテリーに関する基礎知識
電動アシスト自転車のバッテリーの寿命は製品ごとに異なりますが、例えば電動アシスト自転車の大手であるパナソニックは「2年以内、・満充電回数700回以下、・性能劣化50%以下1」としています。
これだけだと「どれくらい使ったら減るのか?」「継ぎ足し充電して良いのか?」などがわかりづらいため、まずは電動アシスト自転車のバッテリーに関する基礎知識を解説します。
寿命の計算と目安
電動アシスト自転車のバッテリーは、リチウムイオンバッテリーが採用されています。リチウムイオンバッテリーにはいくつか種類がありますが、電動アシスト自転車の場合は三元系リチウムイオンバッテリーを採用するのが定番です。
主に、リチウムイオンバッテリーの寿命は、
- 充電サイクル
- バッテリー状態
- 経年期間
の3つで決まります。
三元系リチウムイオンバッテリーは、充放電サイクル500〜1,500回程度が寿命と言われています。電動アシスト自転車を日常的に使うとして、往復20kmの道を平日毎日走るとするとちょうど3日程度で充電が必要になります。3日に1回充電をすると、充放電サイクル500〜1,500回だと概ね5年から10年で完全消耗する計算です。
また、バッテリーの保管状況でもバッテリーの寿命は変わってきます。特に大きいのがバッテリーの充電状態で、リチウムイオンバッテリーは、満充電(高電圧)時と完全放電時に化学反応が進むため、バッテリーが劣化します。
さらに、リチウムイオンバッテリー経年劣化もするため、時間経つだけでもバッテリーの充電容量は減っていきます。
将来的には新世代電池でさらに伸びる
バッテリー業界では、三元系リチウムイオンバッテリーは古いタイプのバッテリーで、現在はリン酸鉄リチウムイオンバッテリーがメジャーです。リン酸鉄リチウムイオンは、充放電サイクル3,000回以上と耐久性が高く、さらに発火のリスクも小さいことで、電動アシスト自転車のバッテリーへの採用も期待されます。
また、バッテリー業界で一番大きな革命となるとみられるのが固体電池。トヨタや日産が自動車向けに開発、実用化を目指しているバッテリーですが、2030年頃に市場に出てくるとみられています。固体電池は、発火リスクが極端に小さく、さらにバッテリーを小さくできる(同じサイズで大きな蓄電をできる)ため、これらの市場で一般的になると、電動アシスト自転車の航続距離が一気に伸び、さらに超軽量な電動アシスト自転車も出てくるとみられます。
電動アシスト自転車のバッテリー寿命を伸ばす方法
信頼できるメーカーの電動アシスト自転車を買う
まず最初に大事なのが信頼できるメーカーの電動アシスト自転車を買うことです。電動アシスト自転車の製造コストにおいて、バッテリーはある程度の割合を占めているため、価格が安い電動アシスト自転車はバッテリーの質が低いことがよくあります。一方で、価格が高い電動アシスト自転車は、高品質なバッテリーを使う傾向にあります。そのため価格も高いのです。
質の低いバッテリーは、「充電が持たない」「すぐに劣化してしまう」などの運用面でのデメリット以外にも発火などのリスクもつきまといます。
電動アシスト自転車を買うということは、ある意味「自転車、モーター、バッテリーをセットで買う」という意味でもありますから、信頼できるメーカー、もしくはバッテリーのメーカーを公表している電動アシスト自転車を購入するのが、寿命を伸ばす第一歩です。
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満充電・完全放電状態で放置しない
電動アシスト自転車のバッテリーを満充電や完全放電状態で放置すると、劣化が進みます。
リチウムイオンバッテリーは、100%の充電状態で長期間放置すると、電極材料が劣化しやすくなり、バッテリーの容量が徐々に減少します。これは、満充電状態がバッテリー内部にストレスを与えるためです。
逆に、リチウムイオンバッテリーを完全に放電した状態(0%)で長時間放置すると、内部の電圧が極端に低下し、セルが深刻なダメージを受けることがあります。この状態が続くと、最悪のケースではバッテリーが再充電できなくなることもあります。
リチウムイオンバッテリーは10〜80%程度で保管されているのがベストとされているため、それを意識して管理するだけでも、バッテリーの劣化を防ぐことができます。
バッテリーだけでも室内保管するのがベスト
電動アシスト自転車のバッテリーはIPX6などの防水仕様になっているため、自転車と一緒に外に保管しているというケースがほとんどでしょう。しかし、バッテリーのことを考えたら、乗り終わったらバッテリーだけでも室内で保管するのがベストです。
夏場に直射日光が当たる場所に放置したり、気温がマイナスになるような時期に外に放置すると、バッテリーが内部で劣化していってしまいます。
高温環境にさらされると、リチウムイオンバッテリーの化学反応が加速し、内部での電解質の分解が進行します。これにより、バッテリー容量が低下し、長期的にはバッテリーの寿命が短くなります。特に、40℃以上の環境では劣化が顕著になることが知られています。
一方、低温環境(特に0℃以下)では、バッテリーの内部抵抗が増加し、放電能力が低下します。これは、リチウムイオンの動きが遅くなるためで、一時的に電力供給が不安定になったり、充電可能なバッテリー容量が減少したりします。低温での使用は一時的な影響が大きいですが、極端な低温に長期間さらされると劣化が進むこともあります。寒冷地で使う場合は特に注意しましょう。
以上から、夏場や冬場だけでも、バッテリーを室内保管することで寿命を伸ばすことができます。
継ぎ足し充電をして10〜80%の間で使う
ここまでみてきた通り、リチウムイオンバッテリーが嫌うのは「極端な充電状態」と「極端な温度環境」ですので、継ぎ足し充電をしても問題ありません。「乗る前に継ぎ足し充電をする」ようにすると、満充電・完全放電状態を回避できるため、バッテリーへのダメージを軽減できます。
一般的にバッテリーの充放電サイクルは「0から100%まで充電して、100%から0%まで使い切る」ことを1サイクルとされます。つまり、50%から100%まで継ぎ足し充電をするとバッテリーサイクルは0.25回、そこから50%まで使ったとしても合計で0.5回となります。
そのため、継ぎ足し充電をしたからといって、早くバッテリーサイクルを消費してしまうということはありません。